化粧品には油性原料が広範囲にわたり使用されています。

また、油性原料は、化粧品の構成成分に占める割合もたいへん大きい原料です。

油性原料というと、「石油系の油(鉱物油)=危険」「天然系の油=安全」といったイメージで捉えられる場合が多いのですが、実際にはそんな単純なものではありません。

化粧品に使用されている油性原料は実に様々で、その元になる原料によって、油脂類(植物油脂・動物油脂)、ロウ類(植物性ロウ・動物性ロウ・鉱物性固体ロウ)、炭化水素(石油系・動物系・植物系)、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、に分類されています。

今回はこういった油性原料の中でも炭化水素、その中でも石油系の炭化水素についてお話したいと思います。

石油系の炭化水素は一般的には鉱物油として知られていますが、今でも「鉱物油=危険」というイメージが根強く残っているようです。

この点についても誤ったイメージを払拭したうえで、モルトリーチェの鉱物油についての考え方もご説明したいと思います。



炭化水素の一種「鉱物油」は危険なの?


炭化水素は、炭素と水素のみからなる化合物です。

化粧品の基剤として、非常に多く使われている、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンなどの鉱物系油はすべて炭化水素の一種です。

これらの鉱物系油は石油を分留精製することによって得られます。

いずれも、無色・無味・無臭で、酸化変質することのない不活性な物質です。



鉱物系油というと、油やけやシミの原因物質であり、肌に塗ると危険なものとして、誤解して伝えられてきた感があります。

これは戦後の原料事情の悪化から、不純物の入った質の悪い鉱物油を使用した化粧品が市場に出回った時期があり、これを使用した人が油やけによるシミや色素沈着を起こしてしまったことがあったためです。

現在では、この油やけの原因は鉱物油そのものにあったのではなく、精製度の低い粗悪な鉱物油に含まれていた「不純物」にあったことがわかっています。

ただ、粗悪な鉱物油の使用によって皮膚トラブルが生じたことは事実ですので、今でも鉱物油は肌に良くないと誤解している人は多いようです。

また、自然原料を謳う化粧品会社のなかには、「鉱物油=危険」といった偏った情報を流すことによって、自社製品の宣伝・アピールに利用しているところもあるようです。



現在、化粧品に使われている鉱物油は、石油を分留精製し、不純物を取り除いた純度の高い油だけです。

精製技術が格段に進歩した今の時代、不純物の混入はほとんど考えられません。

それに、炭化水素の中でも、化粧品素材に使用されるようなものは、すべて化学的に安定なものですから皮膚への刺激性もありません。

分子構造的には、すべての分子がきっちりと結びつき合っている状態なので、他の分子と結びつきようがなく安定しているわけです。

酸・アルカリにも影響されませんし、空気中で酸素と結びつくこともありません。

つまり、酸化し変質しないということです。



実は化粧品づくりに適している鉱物油


化粧品が変質してしまっては、皮膚トラブルを発生させる可能性が高くなってしまいます。

ですから、変質のない安定した炭化水素は、化粧品の原料にたいへん適しているといえるのです。

この他にも、炭化水素には化粧品に適した性質があります。



流動パラフィンは、界面活性剤の助けによって水となじみやすく、乳化しやすく、皮膚によく伸びて浸透性はほとんどありません。

油性の物質と相溶性がよいので、クレンジングクリームなどに適しています。

また、エモリエント効果があるので、乳液、クリーム、口紅などの原料として使用されています。

流動パラフィンは鉱物油の代表格のように言われますが、実際にはベビーオイルの原料にもなっているように、安全性に問題はありません。



炭化水素の中でも特にワセリンは、粘着力が強く、伸びやつきをよくする作用があります。

こういった性質を利用して、ヘアクリーム、ヘアコンディショナー、口紅、アイシャドウなどに使われます。

ワセリンの安全性は高く、皮膚科などでパッチテストを行う際の基剤や保湿剤などとして使用されています。



マイクロクリスタリンも粘着力が強く、非常によく伸びる性質を持っています。

しかも、融点が高く、低温でも、変化が見られないという利点もあります。

液体の油性原料と混ぜた場合に、分離して発汗するのを防ぐ特性もあります。クリーム、口紅などにも使われます。



天然由来の炭化水素も化粧品づくりに使用されています


こういった鉱物油系炭化水素の他に、化粧品に使用されているいわゆる天然由来の炭化水素もあります。

なかでも有名なのがスクワランです。

アイザメその他深海にすむサメ類の肝油から得られた炭化水素の一種であるスクワレンに水素を添加して得られるものです。

スクワレンは、人間の皮脂のなかにも存在しています。

スクワレンは、分子がしっかりと結びつき合っていないところがありますので、酸化されやすく不安定です。

スクワレンの分子が結びつき合っていない部分に水素を結びつけることにより、酸化できないように安定させた状態にあるスクワレンがスクワランということです。



スクワランは、鉱物油系炭化水素の流動パラフィンよりも、油性感が少なくあっさりしており、感触の非常に良い油です。

皮膚刺激もほとんどなく、エモリエント効果に優れていますので、高級化粧品には広く使用されています。

ちなみに、サメの肝油からは、プリスタンという別の炭化水素が得られます。

無色・無臭・無味で、スクワランよりも軽い感触をもつ浸透性の強い油状液体です。

かつては、化粧品原料としても使用されていましたが、皮膚刺激があることが分かり、今ではほとんど使用されていません。

スクワレンについては、サメの肝油の他に、小麦胚芽油、米ヌカ油、オリーブなどから、植物性スクワレンを抽出し、水素添加してスクワランをつくり出すことができるようになっています。



それでも鉱物油を使わないモルトリーチェの考え方


このように、炭化水素といっても、鉱物油系、動物系、植物系など実に幅広いものがあります。

危険物質のようにいわれている鉱物油系にしても、高度に精製された鉱物油系炭化水素はまったく安全です。

しかしながら、モルトリーチェ化粧品の場合、鉱物油系の炭化水素は使用しておらず、炭化水素としてはオリーブ由来のオリーブスクワランを使用しています。



モルトリーチェでは、肌本来の保湿機能やバリア機能が健全であるようにサポートするのが化粧品の役目であると考えています。

目指したのは「肌が自ら美しくなろうとする力をサポートする化粧品」でした。

そのためには肌に存在する成分やそれに類似した成分を使用した化粧品こそが、肌に対して自然で馴染みが良く(つまり安全で使用感も良く)、肌機能をサポートするうえでも効果的だというのが、モルトリーチェの化粧品開発の考え方です。

使用している原料・成分もそういった考え方に沿って採用しています。



炭化水素という化粧品原料にしても、鉱物油=危険だとは考えていません。

むしろ、鉱物油は一時刺激も少なく、品質も安定しやすく、製造に際してのコスト的なメリットもあります。

ただ、重要なことは、鉱物油そのものは肌には存在しないということです。

でも、スクワレンであれば皮脂成分として肌に存在しています。皮脂には肌の潤いを守り保護する大切な機能があります。

であれば、皮脂成分に似た成分で構成した化粧品の方が、肌機能の維持という面で良い影響があると考えられるわけです。



また、鉱物油は肌に存在しないということだけではありません。

鉱物油と安定性の高い(分解しにくい)合成界面活性剤を一緒に使った時、皮膚の正常なはたらきに何らかの悪影響を与えないかという懸念も完全に消し去ることができません。

このように考えた結果、モルトリーチェ化粧品においては、鉱物油系炭化水素は使用せず、オリーブスクワランを使用しています。

また、その他の原料・成分についても、同じような考え方に沿って、自然界に求め採用しています。

もちろん原料を自然界に求めるからには、不純物や酸化する成分は除くか、酸化しないようにして使用しているのはいうまでもありません。



モルトリーチェ化粧品の開発コンセプトや商品設計等については、モルトリーチェ公式サイトをご覧ください。




初投稿:2007/02/03