化粧品の安全性の問題となると、決まって俎上に載るのが、鉱物油、防腐剤、香料、そして界面活性剤です。

鉱物油、防腐剤、香料については、このブログの中でも取り上げています。

界面活性剤については別のブログ記事「界面活性剤の入っていないシャンプーありますか?」で少し触れていますが、あまり詳しいことは書いておりませんので、今回は界面活性剤をテーマにしたいと思います。

ただ、界面活性剤と一口に言っても、テーマとしてその範囲はあまりに広すぎますので、ここでは化粧品に使用する界面活性剤に絞って書いていきたいと思います。



誤解されている?界面活性剤


もう、ずいぶん前から、界面活性剤は人にも環境にも有害なものとして考えられているようです。

今回のブログ記事を書くにあたって、改めてインッターネットで界面活性剤について検索してみると、今でも界面活性剤というのはたいへんな悪役としてとらえられているようです。

ただ、界面活性剤が危険物質だという情報については、界面活性剤をよく理解していない間違った考え方に基づいたものや、商品の宣伝のために界面活性剤の危険性を必要以上に煽っているものが多く見受けられます。

また、一般消費者の皆様に界面活性剤は危険だという誤解された情報が浸透しているために、あえて界面活性剤悪玉説に便乗してビジネス展開されているものあるように思います。

実際のところ、化粧品造りには、界面活性剤の使用は不可欠です。

界面活性剤がなければ、洗浄効果を与えることができませんし、乳液やクリームなど乳化物(エマルジョン)を造ることができません。

また、保湿成分など美容成分を化粧品ベースに溶かし込むことも難しくなってきます。

ですから、界面活性剤フリー(不使用)を謳っている商品や、界面活性剤悪玉説を主張する化粧品会社の商品でも、よくよく成分を見てみると、実際には界面活性剤なるものもあります。



確かに、界面活性剤の中には肌に対して危険なものもありますし、かなり以前にはそういった界面活性剤を使用した化粧品もあったようです。

しかし、現在では、化粧品に使用される界面活性剤については、肌への危険性が少ないものがほとんどです。

「界面活性剤=悪」と短絡的に考えてしまうと、本当に良い化粧品と巡り合えなくなってしまいます。

その結果、肌を健やかに保つという本来の目的からもかけ離れてしまう可能性だってあります。

やみくもに界面活性剤を敬遠するのではなく、界面活性剤について正しく理解することも必要ではないでしょうか。



界面活性剤にはたくさんの種類が!


界面活性剤といわれるものにはたくさんの種類があります。

界面活性剤、あるいは界面活性剤としての機能を持つものは、何千種類も存在するとされ、それぞれ、特徴や用途が違います。

その中には、危険なものもあれば、安全なものもあります。

皮膚や人体に対して、刺激の強いものもあれば、弱いものもあります。

環境汚染につながるものもあれば、環境汚染の心配がないものもあります。

界面活性剤の素材自体も、天然由来といわれるものから、天然系合成のもの、アミノ酸系合成のもの、石油系合成のものと様々です。

また、界面活性剤としての機能も様々です。

界面活性剤としての機能が高くても刺激性が強ければ、安全性という面で問題がありますし・・・

刺激性が弱くても界面活性剤としての機能が低かったら、高品質の製品はつくれません。

もちろん、どの界面活性剤を利用するかによって、製造コストも違ってきます。

化粧品メーカーは、こういった数多い界面活性剤の中から、その製品に適したもの、あるいは企業ポリシーに合致したものなどを取捨選択し、化粧品造りに使用しています。



それでは、界面活性剤を使用することなく、化粧品はつくれないのでしょうか?

答えは基本的には「ノー」です。

もちろん、界面活性剤を使用しないで化粧品をつくることが不可能ということではありません。

しかし、製品として安定していて、使用感も良く、化粧品としての機能を高めるためには、やはり使わざるを得ないとということになります。

それは、界面活性剤には、汚れを落とす「洗浄」、水と油を混ぜ合わせる「乳化」、顔料(おしろい)などを均一に配合する「分散」、有効成分などを溶かし込む「可溶化」など、化粧品製造に不可欠なはたらきがあるからです。

問題は、数多くの界面活性剤の中からどの界面活性剤を選択して使用するかであって、界面活性剤そのものの使用を否定してしまうと、化粧品として品質の高いものはつくれません。

ですから、市販されている化粧品で界面活性剤を使用していないものは極めて稀です。



界面活性剤不使用といいながら実際には・・・


先に述べましたように、界面活性剤フリー(不使用)というキャッチフレーズの化粧品もあったりします。

しかし、その化粧品の説明等をよくよく見ると、合成界面活性剤を使用していないということであって、実際には界面活性剤が使用されているということもあります。

ただ、この合成界面活性剤フリー(不使用)というのも、実は怪しげな表現です。

このように記載している化粧品を調べてみると、確かに天然系とされる界面活性剤を使用していたりするわけですが・・・

こういった天然系の界面活性剤と言われるものは、由来が植物など天然系ということであって、実際には人間が化学的に合成したものには間違いないのですから合成界面活性剤です。

例えば、天然系の界面活性剤と言われるもので代表的なものに、モルトリーチェでも使用しているステアリン酸グリセリルがあります。

これは無添加化粧品や合成界面活性剤フリー(天然界面活性剤使用)などと謳っている化粧品によく使用されたりします。

グリセリンとステアリン酸(大豆など植物由来の脂肪酸)から化学的に合成されたものですから、由来は天然系かもしれませんが、やはり合成界面活性剤と言うべきです。

ですから、こういった場合は、合成界面活性剤フリー(不使用)と言うのではなく、「石油系合成界面活性剤フリー(不使用)」と言い方にすべきかなとも思います。

あるいは、せめて「天然系の合成界面活性剤を使用」などと言わなければいけないと思います。もちろん、グリセリンが植物由来の場合に限りますが・・・

ただ、石油だって元をたどれば天然由来ということになるのでが・・・

それに、植物を由来とする天然系合成界面活性剤であっても、その中には作用が強く、その分皮膚刺激性も高いという界面活性剤も存在します。

一概に天然系の界面活性剤だから安全というわけでもありません。



なお、純粋に天然成分から得られた界面活性剤もあります。

例えば、レシチンやサポニンなどです。

ただ、これらは界面活性剤としての機能は弱く、化粧品に使用する場合は、他の界面活性剤と併用する必要があります。

また、非常に酸化しやすいため、レシチンなどは、酸化しないように水素を添加して安定化して使用することが多く、こうなると天然の界面活性剤ではなく、天然系の合成界面活性剤ということになってしまいます。

また、界面活性剤と比べて安全なものと考えられている「石けん」にしても、脂肪酸ナトリウムあるいは脂肪酸カリウムのことであり、油(脂肪酸)と水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムにより合成された合成界面活性剤のひとつです。

石けんは、人間がつくった最も古くて簡単な合成界面活性剤ということになります。

自分で石けんをつくるという方もいて、何となく安心・安全なイメージがありますが、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムといった劇物を使う以上、きちんとした製造工程をふまないと完全に安全とは言い切れません。

化粧品を造る以上、何らかの界面活性剤の利用は避けては通れません。

各化粧品会社は、数多くの界面活性剤の中から、肌にやさしく、機能が優れたもの、さらには環境に悪影響を与えないものを取捨選択し使用しているわけです。



モルトリーチェで使用している界面活性剤は?


モルトリーチェでも、開発段階で界面活性剤の使用に際していろいろと検討いたしました。

製品として安定した高品質な化粧品を造る以上、界面活性剤は必要です。

しかし、肌への刺激は極力抑えた安全性の高いものでないといけません。

また、モルトリーチェでは、肌に自然で馴染みの良い原料を使用したいという基本的な考え方を持っており、そのために海と大地の恵みを活用した化粧品造りに取り組んでいます。

モルトリーチェ化粧品で使用している界面活性剤は、一般的には天然系の合成界面活性剤と言われたり、アミノ酸系合成界面活性剤と言われたりするものや、天然の界面活性剤とも呼べるレシチンなどです。

洗顔剤には石けん(ミリスチン酸石けん)を使用しています。

安全性にも配慮しながら、界面活性剤としてのはたらきを十分に持つものとして、大豆由来の脂肪酸系の合成界面活性剤が中心になっています。

また、環境問題への配慮からも、生分解性の良い(細菌などの微生物などにより簡単に分解される)界面活性剤を使用しています。

なお、モルトリーチェで使用している界面活性剤とその簡単な特徴は以下の通りです。

製品への使用用途として、界面活性剤的な機能や界面活性剤の補助を目的に配合されているものをご紹介しています。


ステアリン酸スクロース


スクロース(ショ糖)とステアリン酸(大豆由来の脂肪酸)の結合によりつくられた界面活性剤です。

乳化剤、分散剤として使用されています。

皮膚をなめらかにして肌のキメをととのえる効果や、皮膚柔軟効果があります。

食品添加物として乳製品に使用されたり、洗浄剤にも使用されたりします。

ステアリン酸グリセリル


グリセリンとステアリン酸(大豆由来の脂肪酸)の結合によりつくられ界面活性剤です。

乳化、分散、浸透作用に優れ、乳化の安定性を高める補助剤として使われます。

腐敗や酸化もされにくく、様々な化粧品、石けん、シャンプー、リンスなどに幅広く使われます。

安全性が高く、食品や医薬品にも使われ、無添加を標榜する化粧品にもよく使用されます。

ステアロイルグルタミン酸Na


アミノ酸の一種であるグルタミン酸と脂肪酸によりつくられた界面活性剤です。

洗浄力と起泡力があり、洗顔クリーム、石けん、シャンプーなどに使われます。

皮膚と同じ弱酸性で、皮膚や粘膜への刺激が弱いことから、敏感肌用の石けんやシャンプーなどにも使用されます。

ココイルアルギニンエチルPCA


アミノ酸の一種であるアルギニンと脂肪酸(ヤシ油由来)を結合し、ピロリドンカルボン酸塩としたものです。

界面活性剤として使用されるほか、抗菌性があるため天然の保存剤としても利用されます。

ココイルグリシンK


アミノ酸の一種であるグリシンとヤシ油由来の脂肪酸から得られる界面活性剤です。

低刺激の洗浄剤として無添加化粧品などによく使われます。クリーミーな泡をつくります。

コカミドDEA


ヤシ油由来脂肪酸とジエタノールアミン(DEA)により得られる界面活性剤です。

起泡性、泡の安定性、増粘性、洗浄性を高めるために、他の界面活性剤の補助として多く使用されます。

リゾレシチン


レシチンは、リン脂質ともいい、細胞膜を構成している大事な成分の一つで、天然の界面活性剤です。

化粧品原料としては、大豆から取れるダイズリン脂質が多く使われます。

保湿効果が高く、皮膚の柔軟効果があります。また、成分の肌への浸透性を高める効果に優れています。

ただ、レシチンの界面活性作用は、単独で使用できるほど強くなく、ほかの乳化剤などと組み合わせて使われます。

リゾレシチンは、レシチンを酵素により、アルキル鎖を一つ取り除いたもので、レシチンより親水性が増し、界面活性剤としての機能が強くなっています。

化粧水、乳液、クリーム、美容液、ファンデーション、メイクアップ化粧品、ヘアカラー、パーマネント剤などに使われています。食品添加物や、医薬品にも広く用いられています。

ミリスチン酸


ヤシ油やパーム油から得られる飽和脂肪酸でエモリエント効果や保湿効果がります。

このミリスチン酸を水酸化カリウムでケン化したものがミリスチン酸カリウム=石けん=界面活性剤です。

穏やかな洗浄作用で、泡立ちも良く、高級洗顔クリームに使用されます。

その他の界面活性剤


・ステアロイル乳酸Na ・ステアリン酸PEG-60グリセリル ・ステアリン酸ポリグリセリル−10 ・ジステアリン酸ポリグリセリル−10 ・ペンタステアリン酸ポリグリセリルー10

ステアロイル乳酸Naは、脂肪酸と乳酸との縮合物のナトリウム塩で、乳化剤として使用されます。

その他は、いずれも、グリセリンと、脂肪酸であるステアリン酸から作られる非イオン界面活性剤です。乳化剤、分散剤として使用されています。



さて、今回は界面活性剤についてご理解していただきたいということで、ここまで書いてきましたが、まだまだ説明不十分です。

続きは以下のブログ記事(界面活性剤パート2)をご覧ください。

[関連ブログ記事]誤解が多い?化粧品の界面活性剤について【2】



モルトリーチェ化粧品は、健康な肌であれば本来有している「肌が自ら美しくなろうとする力」をサポートします。

モルトリーチェスキンケア化粧品の詳細については、以下のモルトリーチェ公式サイト内のページでご案内しておりますので、是非ご覧ください。




初投稿:2007/09/30