暑い夏の大量の汗、ベタベタして気持ち悪いし、化粧くずれが気になるし・・・
汗なんかかきたくないと思ったりもするわけですが・・・
汗には体温調節というたいへん重要な役割がありますし、恒温動物である私たち人間にとって、発汗はなくてはならい機能です。
汗は、私たち肌の状態にも大きな影響を与えています。
ただ、汗が肌健康にプラスにはたらく場合もあれば、逆にマイナスにはたらく場合もあります。
汗の肌への影響をよく理解したうえでスキンケアに取り組むことも大切です。
今回は、汗と肌健康の関係についてお話ししたいと思います。
汗が肌健康にプラスはたらく場合
汗が肌保湿にはたらく
汗は、塩化ナトリウム、尿酸、乳酸その他成分も微量含まれますが、その主成分(99%以上)は水です。
健康的な肌においては、皮脂腺から分泌される皮脂という油分と汗(水分)が混じり合って、まさに天然のクリームとして皮膚表面に広がり、肌乾燥を防いだり外的刺激から肌を保護したりしています。
秋冬になると、汗も皮脂もその量が少なくなりますので、この天然のクリーム(皮脂膜)も少なくなり、肌は乾燥しやすく肌荒れが生じやすくなったりします。
また、加齢とともに汗も皮脂もその分泌量は減ってきますので、それが肌老化の原因のひとつでもあります。
逆に、春から夏にかけては、汗も皮脂もその量はどんどん増え、皮膚表面には十分な天然のクリーム(皮脂膜)が広がり、肌は潤いを保ちやすい状態となります。
細菌の繁殖を防ぐ夏の汗
それから、健康的な皮膚のpH値は弱酸性であるとよく言われますが、皮膚表面は酸性に保たれることによって、皮膚に害を及ぼす細菌などの繁殖を抑えています。
そして、皮膚の酸性度は、汗に含まれる乳酸の量も関係しているといわれます。
春から夏にかけて、発汗量が増えるとともに皮膚の乳酸量も非常に多くなり、つまり皮膚の酸性度も高くなり、細菌に対して抵抗力の強い皮膚状態になります。
夏場は高温多湿で、細菌の繁殖なども心配されますが、汗の多さが乳酸量を増やし、酸性度を高め、肌を健やかに保つようにはたらいているわけです。
このように、汗は肌健康にとってプラスにはたらいてくれるという側面もあるのですが・・・
ただし、これはあくまで適度な発汗量の場合であって、度が過ぎると肌健康にはマイナスとなりますので要注意です(もちろん皮脂についても同じことが言えます)。
汗が肌健康にマイナスにはたらく場合
上記の通り、汗は肌保湿にプラスにはたらいてくれたり、皮膚の酸性度を高め細菌に対する抵抗力を強くしてくれたり、ということもあるのですが・・・
逆に、汗の影響で肌が乾燥しやすくなったり、トラブルが生じやすくなったりする場合もあります。
汗が細菌の繁殖を促すことも
まず、汗そのもののpH値は弱酸性なのですが、大量の発汗の後、それがそのまま放置されていると、汗のpH値はアルカリ性になり、皮膚表面の酸性が中和され細菌の繁殖しやすい状態になってしまいます。
さらに、汗で湿った状態の皮膚表面というのは、空気中のチリやホコリ、その他様々な浮遊物が付着しやすい状態です。
皮膚表面で細菌を抑える力が弱まり、そこに外部の異物が付着した状態というのは、肌荒れなどのトラブルが発生しやすい状態でもあります。
一旦肌荒れなどが生じてしまうと、新陳代謝のサイクルが乱れ、保湿機能やバリア機能の劣る角質層が形成されてしまう・・・
つまり、慢性的に乾燥しやくすくトラブルの起きやすい肌ということになってしまう危険性もあります。
汗と肌保湿〜角質層が担う保湿機能
ココで注意してほしいのは・・・
夏場、汗で皮膚表面が湿っていると、肌が十分に潤っているように感じてしまいますが、本当に水分が保たれておく必要があるのは角質層であるということです。
皮膚表面の湿り気(水分)というのは、夏場でも冷房のきいた部屋に入るとまたたく間に蒸散してしまいます。
それでも皮膚に必要な水分を逃さないようにしてくれるのは(肌乾燥を防いでくれるのは)、皮膚最上層の角質層です。
角質層が水分をしっかり保持してくれる状態であれば、バリア機能も正常に機能し様々な肌トラブルも起こりにくくなりますし、見た目にも滑らかでキメの細かい肌状態になります。
角質層は、厚さ0.02mmほどで、 薄い角質細胞が層状に10数枚から20枚ほど重なり合って形成されています。
角質細胞と角質細胞の間には、セラミドなどの細胞間脂質やNMFといった保湿成分が存在し、規則正しい層構造を形成することで、保湿機能やバリア機能を維持しています。
汗と保湿〜汗が肌乾燥の原因になることも
しかし、大量の発汗はこの角質層の保湿機能やバリア機能を低下させてしまうこともあるのです。
大量の汗が皮膚表面にどんどん出てくると、皮膚表面を潤すとともに、角質層にも大量に吸収されていきます。
一時的に角質層が汗という水分でふくらんだ状態(いわゆるふやけた状態)になってしまいます。
この水分が蒸散するにつれて、角質層も元の状態に戻るのですが、大量の水分が急激に蒸散すると、角質層の層構造を乱し、同時に細胞間脂質やNMFといった潤い成分を流出させてしまうことがあります。
そうなると、角質層の保湿機能やバリア機能は低下し、乾燥しやすく、トラブルも起こりやすい肌状態となってしまいます。
また、角質層に何らかの異変があると、それを修復しようと通常よりも早いペースで新陳代謝が行なわれるようになります(新陳代謝の亢進)。
これは、基底層で生まれた細胞が未成熟なまま角質層へ押し上げられ、層構造が不健全で細胞間脂質やNMFも不足した角質層が形成されてしまうことになります。
さらに角質層の保湿機能やバリア機能は低下し、慢性的な肌乾燥や肌荒れの状態になってしまいます。
大量の汗でその他にもこんな心配が
このように、大量の汗というのは、肌乾燥や様々な肌トラブル、そして肌老化の原因にもなりますし、他にもいろいろと心配なことがあります。
あせもについて
まず、思い浮かぶのは「あせも」です。
汗は汗腺から分泌され、汗管を通って汗孔という出口から皮膚表面に出てきますが・・・
大量の発汗が続くと、汗が皮膚表面にスムーズに出ることができず、汗管がつまった状態になることがあります。
汗管をつまりやすくなるのは、皮膚表面の付着物(皮脂・汚れ・古い角質・その他)も影響しています。
汗管がつまってしまうと、汗が汗管から皮膚組織に漏れ出し、水疱が生じたり、炎症を起こしてしまうことがあります。これが「あせも」です。
皮膚表面に近い部分で汗管がつまった場合の「あせも」は、白っぽくて痒みも伴わず、症状は比較的軽く、汗管がつまらないように洗浄に注意すればそのうちに治ることが多いです。
奥の部分で汗管がつまった場合の「あせも」は、赤くなり痒みも伴い、それを掻いてしまうと症状がさらに悪化します。この場合、薬の使用や医師への相談が必要となったりします。
汗の臭いについて
汗は本来は無臭なのですが、大量の汗をかいた後、それが皮膚表面の様々な付着物と混じりあい、そこに細菌が繁殖すると、そのうちに臭いが発生してきます。
汗腺には、体中に分布するエクリン腺と、脇など一部の部分に存在するアポクリン腺という2種類の汗腺があって、強い悪臭(ワキガなど)の原因はアポクリン腺から分泌された汗なのですが・・・
実はエクリン腺から出る汗もアポクリン腺から出る汗も本来は無臭であって、どちらも、皮膚表面に出てきてから、そこに細菌が繁殖することで臭いを放つようになります。
アポクリン腺から出た汗がより強烈な臭いとなりますが、エクリン腺から出た汗も時間の経過とともに細菌が繁殖し、いわゆる汗臭い臭いというものになります。
汗を拭くときも要注意
汗を拭くときも注意が必要です。
次から次に流れ出る汗を拭こうと、タオルなどで何度も何度の肌の表面をゴシゴシやってしまうと、それ自体が強い刺激となりますし、薄い角質層を傷つけてしまうことになります。
ひどい場合は炎症を起こしてしまうこともありますし、そうでなくても、角質層の層構造を乱し保湿機能やバリア機能を確実に低下させてしまいます。
肌乾燥を防ぎ、肌荒れなどのトラブルを起こさないようにするためには、決してゴシゴシ擦らずに、やわらかい素材のタオルなどでやさしく押さえるようにして拭き取る必要があります。
夏の美肌のための汗対策
こういった汗の悪影響を防ぐためには、汗をかかないのが一番なのでしょうが、汗には体温調節というきわめて重要な役割があります。
また、肌との関係においては、汗を全くかかない状態というのは、間違いなく肌が乾燥しやすい状態にあるということでもあります。
やはり、夏場は、ある程度の汗をかきながら生活するということは避けられませんし、そういった中で、汗が肌に対してダメージを与えないように注意することが必要だと思います。
汗はこまめに拭き取る!ただしやさしく
大切なのは、汗をかいたあとのスキンケアになります。
大量の汗をかいてそのまま放置しておくと、汗のpH値はアルカリ性に傾き、皮膚表面は細菌の繁殖しやすい状態になります。
また、汗をかいて湿り気のある皮膚は、空気中の様々な浮遊物が付着しやすく、これもトラブルの原因となったりします。
汗をかいたら、なるべくこまめに拭きとるか、洗い流すようにしましょう。
ただ、汗を拭き取る際は、やわらかい素材のハンカチやタオルなどで、決して強く擦らずに、やさしく押さえるようにして汗を吸い取るようにしましょう。
もし、メイクアップ等の問題がなければ、少し濡らしたタオルなどを使うとよいでしょう。
それから、シャワーあるいは洗顔で洗い流す場合ですが、汗そのものは洗浄剤(ソープや洗顔フォームなど)を使わなくても、水だけで洗い流すことができます。
ただ、汗が大量に出たときは、皮脂の分泌も活発になっていることも多く、また様々な付着物が皮膚表面に残っていることがあります。
洗浄剤は肌の潤いを奪うので、使いすぎはよくないという考えもありますが、一日に一度は洗浄剤を使って洗い流した方がよいと思います。
この場合、洗浄剤はなるべく低刺激のもので、よく泡立てるということ、そしてゴシゴシと擦らないで洗い流すようにしてください。
肌への保湿対策も忘れずに!
大量の汗をかいた後、それが蒸散する際に、肌の潤いまで同時に奪ってしまいます。
また、その時に角質層の保湿機能を低下させてしまう可能性もあります。
化粧水で潤いを補給するとともに、角質層の保湿機能をサポートするために乳液や美容液などを適宜使用することもおすすめします。
また、化粧水、乳液、美容液のpH値はほとんどが弱酸性であり、大量発汗の後アルカリ性に傾きかけた皮膚表面を弱酸性に保ち、細菌への抵抗力を高める効果もあります。
夏場は、湿度が高く、発汗量も多いので、皮膚表面が湿っているように感じますが、大切なのは角質層の水分保持機能が適正に保たれることです。
インナードライ肌とならないように夏場の保湿対策もしっかり行なう必要があります。
夏のインナードライ肌については、以下のブログ記事もご覧ください。
[関連ブログ記事] 潤っているはずなのに〜肌乾燥で皮膚トラブル発生〜インナードライ要注意!
[関連ブログ記事] 夏場も油断しないで!保湿対策は大切
初投稿:2011/06/28